2024/09/17 08:44
俺は36歳、典型的なオタクおじさんタケル。秋葉原が生活の一部、休日はアニメグッズやフィギュアを探して店を巡るのが楽しみだ。Fラン大学を卒業し、中小企業でシステム管理の仕事をしているが、仕事は与えられたことを淡々とこなしているだけ。お金はほとんどオタク生活のために使い、仕事自体にはやる気がない。ただ、やらされている感じで流されるままに生きている。給料はそこそこだが、残業が多くプライベートはほとんどない。見た目はと言うと、170センチ、91キロ、腹は突き出ていて、髪の毛が少し薄くなって来始めている気がする。鏡を見るたびにため息が出るが、今さらどうしようもない。
普段は、会社と家の往復で終わる毎日。彼女なんて生まれてから一度もできたことがない。もう恋愛は二次元だけで十分だと自分に言い聞かせていた。好きなアニメのキャラクターが俺の心の癒しであり、俺の世界はそれで完結していた。
そんな俺に、奇跡のような出来事が起きたのは、ある秋の日のことだった。
その日、俺は推しアニメのコラボアクセサリーがアルテミスクラシックで発売されるという噂を聞き、お店に足を運んだ。そこで出会ったのが、あのSSR級の美人店員、**由香里**だった。
彼女は一目で目を引くほどの美貌を持っていた。黒髪ロングに小顔、肌は透き通るように白く、165センチくらいのスラっとした体型。お洒落なカジュアルファッションが完璧に似合っていて、まるでファッション雑誌のモデルのようだった。俺はその美しさに圧倒され、しばらく彼女を直視できずにいた。結局、アクセサリーを買うという口実で、慌てて話しかけたが、緊張のせいでどもり気味だった。
「こ、これ、ください…」
彼女は優しく微笑みながら、「ありがとうございます!」と明るい声で対応してくれた。その笑顔に心が一瞬で奪われたのを覚えている。それ以来、俺は彼女に会いたい一心で、毎週末アルテミスクラシックに通うようになった。
アクセサリーを買うという口実を使って、何度も店に通い続けた俺。最初は緊張してまともに話せなかったが、半年ほど通った頃には、彼女も俺を覚えてくれたようで、「いつもありがとうございます!」と名前を呼んでくれるようになった。その時の俺の嬉しさと言ったらなかった。由香里の笑顔を見るたびに、俺は心が癒され、彼女への想いが日に日に強くなっていった。
でも、俺のような中年オタクが、彼女のようなSSR級の美人と付き合うなんてあり得ないと思っていた。彼女と話せるだけで十分だ、そう自分に言い聞かせていたんだ。
そんな俺に、さらに驚くべき出来事が起こった。ある日、彼女が突然言った。
「今度、ロックバンドのライブに行くんですけど、もしよかったら一緒にどうですか?」
一瞬、耳を疑った。俺が彼女とライブに行く…?こんなことが本当に起きるのか?俺は動揺を隠しきれずに「は、はい!」と勢いよく返事をした。信じられない気持ちだったが、夢のような展開に胸が高鳴っていた。
ライブ当日、俺は普段とは全く違う自分を作り上げようとした。秋葉原では着ないような、少しカジュアルでお洒落なシャツを買い、髪型もできるだけ整えた。鏡を見ても、「これで大丈夫か…」と自問自答しながらも、気合を入れて会場に向かった。
会場に着くと、彼女はすでに来ていた。彼女は俺を見ると、ニコッと笑って「今日楽しみですね!」と明るく言った。その瞬間、俺の不安は吹き飛んだ。こんな美人と一緒にライブを楽しめるなんて、本当に夢のようだった。
しかし、俺の幸せは長く続かなかった。
ライブが始まる少し前、彼女は隣にいた男性を指さし、こう言った。
「彼、私の彼氏なんです。」
目の前が真っ白になった。彼氏?そんなこと聞いていなかった。しかも、その彼氏は、俺とは正反対のタイプだった。背が高く、整った顔立ち、髪も長く、見た目もバッチリ決まったミュージシャン風の男だ。ギタリストらしく、腕にはタトゥーが入っている。俺は何も言えずに立ち尽くしていた。
彼女とその彼氏が楽しそうに話すのを横目で見ながら、俺はただ音楽に身を委ねた。でも心の中は、砕けたガラスのように粉々だった。
ライブが終わっても、俺はずっと落ち込んでいた。それでも、彼女との関係が切れるのが怖くて、俺は表面上は普通に接し続けた。
彼女と彼氏がうまくいっていないということを知ったのは、それから、しばらく後のことだった。彼氏とのすれ違いや仕事の悩みが原因で、喧嘩が増えているらしく、俺はその相談役を務めるようになった。